パリのキャンバスに日本の魂を描く
~荻須高徳の風景画はどこか懐かしい

荻須高徳(おぎす たかのり)は、1901年生まれの、大正・昭和期の洋画家です。彼は戦前・戦後を通じて、半世紀以上をフランスで過ごし、パリの街並みなどを描き続け、フランスで最もよく知られていた日本人画家の一人でした。


荻須高徳は、東京美術学校(現・東京藝術大学)で学び、その後、1927年に渡仏しました。彼はルーヴル美術館の絵画群や、ルオーやヴラマンク、ユトリロなどの同時代の画家の作品から刺激を受け、本場の油絵を貪欲に吸収しました。


フランスで、1928年のサロン・ドートンヌ入選を皮切りに、1934年には最初の個展をジュネーヴで開催するなど、画家としての成功の道をのぼっていたのですが、道半ばの1939年に第二次世界大戦の影響で帰国せざるをえませんでした。


藤田嗣治よりも早く1948年に再び渡仏した荻須高徳は、戦後初めてフランスに入国を許可された日本人画家となりました。以降、1986年に84歳でパリで亡くなるまで、通算して半世紀以上、フランスで画家として生きました。

荻須高徳《ル・ペック》
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