ナチスに奪われたルノワール、
美術館から遺族に返還されるも、再購入で展示再開!

ルノワール《オー・カーニュからの海の眺め》


ドイツのオストハウス美術館に所蔵されていたルノワールの風景画《オー・カーニュからの海の眺め》は、ナチスによって押収された過去を持っていました。


元所有者はユダヤ人の大コレクターで銀行家のヤコブ・ゴールドシュミットです。彼がナチスの迫害を逃れるためにドイツを離れた際、残されたコレクションの一部はナチスに差し押さえられ、オークションにかけられました。


そのうちの1点がルノワール《オー・カーニュからの海の眺め》です。この作品は何人かの手を経て、1989年にオストハウス美術館に寄贈されました。


ゴールドシュミットの遺族は絵画の返還を求めて15年以上にわたって交渉を続けていました。そしてついに2023年6月、美術館は絵画を遺族に返還することを決定しました。


しかし、それで終わりではありません。ハーゲン市は、州や文化省からの資金提供を受けて、適切な価格で遺族から絵画を買い戻し、美術館での展示を再び続けることになりました。美術館は、今後はゴールドシュミットに関する情報を添えることでその歴史を伝えるとしています。


先祖がナチスに迫害されて絵画などの財産を失ったと、ユダヤ人の子孫が美術館などに返還を求める交渉や訴訟が世界中で起きています。


日本のSOMPO美術館も、所蔵するゴッホ《ひまわり》の所有権を主張するユダヤ人銀行家から2022年12月に提訴されました。SOMPO美術館は「主張を否定する」として裁判に臨んでいます。


ニューヨークのグッゲンハイム美術館もピカソ《アイロンをかける女性》の返還を求められ、調査をして拒否したところ、2023年1月に提訴されることになりました。同じくニューヨークのメトロポリタン美術館もゴッホの絵をめぐって2022年12月に訴訟を起こされています。


このような交渉は決着までに10年以上かかることも珍しくありません。大英博物館が「泥棒博物館」と揶揄されたり、ルーヴル美術館がナポレオン戦争で所蔵品を大きく増やしたりしたように、高価な美術品は時代の激動を反映しているのです。


本日2月24日は、ロシアがウクライナに突然の軍事侵攻をした日に当たります。2022年の侵攻から今日でちょうど2年が経ちました。両国ともに数万人の戦死者を出していますが、戦闘は止む気配がありません。昨年からのイスラエルによるパレスチナ・ガザ地区への軍事侵攻も続き、それによる死者数は3万人を越えようとしています。戦争は過去のものになってはいません。


なお、明日2月25日はルノワールの誕生日です。R.I.P.


ルノワール買取のご相談はこちら>>
ルノワールの販売ページはこちら>>

アートニュース一覧