存在と不在の間に立つ、想像力の彫刻
—オノ・ヨーコ個展「A statue was here 一つの像がここにあった」
2025年、92歳になったオノ・ヨーコの個展「A statue was here 一つの像がここにあった」が、小山登美夫ギャラリー六本木および天王洲の2会場で同時開催されています(7月5日まで)。
オノ・ヨーコは、2024年にイギリスの現代美術館テート・モダンで大規模な回顧展が開催され、2025年6月現在はドイツのベルリンでもグロピウス・バウでの大規模個展「ミュージック・オブ・ザ・マインド」、新ナショナルギャラリーの「ドリーム・トゥギャザー」、そしてストリートアート「Touch」など3つの展示がおこなわれるなど、世界的に再評価が進んでいるアーティストです。
本展では、「存在と不在」「想像力による実体化」というテーマのもと、オノ・ヨーコのコンセプチュアルな作品群が展示されています。素材には白や透明のアクリルが多用され、オブジェやインストラクション、鑑賞者参加型インスタレーションなど、多様な形式で構成されています。
六本木会場では、「コンセプチュアル・オブジェ」と呼ばれるアクリル素材と既製品の組み合わせによる作品や、初公開作品《Three Lives》(2019)などが展示されています。鑑賞者自身の姿が映し出され、自己との対話が促されます。
一方、天王洲会場では、鑑賞者が包帯を巻く《Wrapping Piece》や円を描く《Draw Circle Painting》など、自由な参加を促す作品が並びます。特に注目されるのは《Mend Piece》で、今回は能登半島地震により実際に破損した磁器片が用いられており、時事的な文脈と深く結びついています。
キュレーションを担当したのは、スタジオ・ディレクターのConnor Monahan氏です。彼の視点のもとで展開される本展は、オノ・ヨーコの根源的な問いかけ——「私たちは、そこにあったはずの像にどう意味を与えるのか」——に向き合わせてくれます。
オノ・ヨーコの1981年のアルバム『Season of Glass』は、夫のジョン・レノンが1980年に殺害された後に制作されたものです。ジャケットにはジョン・レノンの血まみれのメガネが使われました。