「版画の世界―反復と増殖―」展が京都で開催!~
草間彌生の版画作品の売買ガイド

世界的な前衛芸術家として知られる草間彌生。
その大規模版画展「松本市美術館所蔵 草間彌生 版画の世界―反復と増殖―」京都市京セラ美術館の新館「東山キューブ」にて、2025年4月25日から9月7日まで開催されています。
この貴重な展示は、草間彌生の故郷である松本市美術館が誇る約330点の版画作品に、作家蔵の作品を合わせた充実した内容となっています。

草間彌生 版画の世界 -反復と増殖- 公式サイト


草間彌生の版画が一堂に集まる!

本展では、草間彌生が取り組んできた多彩な版画技法を一堂に紹介しています。
シルクスクリーンやエッチング、木版画などを用いた作品は、彼女の創作活動の幅広さと深さを存分に感じることができます。
また、初期の版画作品から近年の代表作である「愛はとこしえ」シリーズまで、彼女の芸術の軌跡を6つの章でたどる内容となっています。
特に注目すべきは、江戸時代の浮世絵技術を取り入れた富士山の木版画連作や、前衛的な南瓜や水玉のモチーフが網羅された作品群です。
そして、会期中には展示作品が前期・後期で完全に入れ替わるため、訪れるタイミングごとに新たな発見があるのも魅力の一つです。
なお、この展覧会は2022年に松本市美術館で開催した特別展「草間彌生 版画の世界」の全国巡回の京都展になります。2024年には鹿児島市立美術館でも開催されました。

草間彌生《かぼちゃ YB-A》シルクスクリーン(翠波画廊にて販売中)


草間彌生の市場評価と世界ランク

草間彌生は、その独特な芸術的ビジョンと、無限の繰り返しというテーマへの執拗な探求によって、世界的に著名な現代アーティストとしての地位を確立しています 。
2023年には、彼女はオークションにおける売上高で8090万ドルを記録し、デイヴィッド・ホックニーやゲルハルト・リヒターといった海外の巨匠を抜き、世界で最も売れた現代アーティストとなりました 。
2024年の売上高も1億3100万ドルに達しており 、その市場における圧倒的な存在感を示しています。市場における強さは、彼女の作品に対する世界的な需要と信頼の高さを示唆しています。

草間彌生《深海》シルクスクリーン(翠波画廊で過去に販売)


オークションの売上高と取引量

草間彌生の作品のオークションにおける取引量と売上高は、過去10年間で着実に増加してきました 。2010年から2019年の間、彼女の価格指数と売上高は継続的に上昇し、その後安定しました。
2020年前半にはパンデミックの影響で一時的に売上高が減少しましたが、その後回復しています 。
特筆すべきは、オークションで販売される彼女の作品の約45%が版画作品であるという点です 。
これは、版画作品が彼女の市場において重要なセグメントを占めており、絵画などの一点ものと比較して、より多くのコレクターが参加しやすい市場であることを示唆しています。

草間彌生《夏の花》シルクスクリーン(翠波画廊で販売中)


草間彌生の人気と作品への需要

草間彌生の作品は、現代アート愛好家だけでなく、より広い層からも高い人気を集めています。
彼女の作品に関連するInstagramの投稿は約8000万件に達しており 、そのソーシャルメディアにおける影響力の大きさが伺えます。
また、ルイ・ヴィトンやユニクロといった主要ブランドとのコラボレーションは 、彼女の作品をより多くの人々の目に触れさせる機会を増やし、世界的な知名度と需要を高めています。
2023年には、イギリスのマンチェスターで開催された「You, Me and the Balloons」展をはじめ、世界各地で彼女の作品展が開催され、多くの観客を魅了しました 。
特にアジア市場における需要は非常に強く、2023年の彼女のオークション売上高の約80%が香港での取引によるものです 。

草間彌生《タンポポ》シルクスクリーン(翠波画廊で過去に販売)


版画作品の価格動向

過去12ヶ月間における草間彌生の版画作品の平均落札価格は約2万8409ドルでした 。
また、過去12ヶ月間の彼女の紙媒体作品(版画を含む)の平均落札価格は約11万5853ドルです 。
この数字は、版画作品を含む紙媒体作品全体の市場価値を示していますが、版画作品単体で見ると、より手頃な価格帯の作品も存在します。
過去3年間で彼女の版画作品の平均販売価格は61%上昇し、2013年からは474%という驚異的な増加率を記録しています 。

草間彌生《無限の網》銅版画(翠波画廊で過去に販売)


「無限の網」と「かぼちゃ」の価格変動

草間彌生の代表的なシリーズである「無限の網」と「かぼちゃ」は、版画作品においても非常に高い人気を誇り、価格動向も注目されています。
「無限の網」シリーズの価格指数は、2000年から2019年の間に1から18へと着実に上昇しており、特に2014年には大きな伸びを見せました 。
1959年から1960年の彼女の米国滞在中に制作された初期の「無限の網」作品は、特に高い評価と価格で取引されています 。
一方、「かぼちゃ」シリーズの価格指数は、同時期に1から30へと、「無限の網」シリーズを上回るペースで急速に上昇しており、近年ではその価格指数は「無限の網」シリーズよりも高くなっています 。
特に1990年代に制作された「かぼちゃ」の作品は、取引高が最も高い傾向にあります 。

草間彌生《かぼちゃ(RT)》シルクスクリーン(翠波画廊にて販売中)


キャリアの異なる時期における価格パフォーマンス

草間彌生の作品は、制作時期によって価格パフォーマンスに違いが見られます。
1973年の日本帰国後に制作された作品は、オークションにおける総取引高の大部分を占めています 。
この時期に彼女が精力的に作品制作に取り組んで、作品数が多かったことが要因です。
一方、1957年から1973年の米国滞在中に制作された作品は、平均価格が最も高い傾向にあります 。
初期の作品の希少性や、彼女が国際的なアートシーンで頭角を現した重要な時期の作品であることが評価されているためです。

草間彌生《かびん》リトグラフ(翠波画廊で過去に販売)


技法による作品の市場価値の違い

市場価値においては、一般的にシルクスクリーンと木版画の作品が高い評価を得ています。
シルクスクリーンは、草間彌生の代表的なモチーフである「かぼちゃ」や「無限の網」などを鮮やかに表現するのに適しておりコレクターからの人気も高いです 。
木版画の例としては、「七色の富士山」という作品がオークションで高額で落札されています 。
リトグラフ作品も市場に出回っていて、オリジナルの限定版でナンバリングされた作品は、高い価格で取引される可能性があります。

草間彌生《宇宙や人類の生命のありか》木版画(翠波画廊にて販売中)
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