ピカソの《ゲルニカ》、30年ぶりに写真撮影解禁!
作品の魂は失われるのか?
スペイン内戦の惨劇を描いたピカソ《ゲルニカ》は、世界中の人々に反戦のメッセージを伝えてきましたが、1992年にソフィア王妃芸術センターの開館とともに美術館の目玉として安置されて以来、館の外に出ることも、その姿を自由に撮影することもできませんでした。まさに「ここでしか見られない」絵となっていたのです。
しかし、時代は変わりました。スマートフォンやSNSの普及により、人々は美術館で見た作品を簡単に撮影して共有することができるようになりました。美術館もその流れに乗って、来館者のニーズに応える必要がありました。そこで、ソフィア王妃芸術センターの新館長は、2023年9月から来館者による《ゲルニカ》の撮影を許可する決断をしました。
決断を後押ししたのはローリング・ストーンズのミック・ジャガーかもしれません。一年前に同館を訪問したジャガーは《ゲルニカ》の写真撮影を望み、特別に許可されていました。これは開館以来30年ぶりの出来事です。しかし、セレブにだけ特権を与えるのはいかがなものかと批判の声が上がっていました。
撮影禁止の解除には賛否両論があります。賛成派は、《ゲルニカ》の撮影が作品の普及や教育に役立つと言います。また、若い世代にとっては写真撮影が作品とのコミュニケーションの一つだと言います。反対派は、《ゲルニカ》の撮影が美術館を混雑させると言います。また、写真撮影が作品を直接見ることから目をそらさせるとも言います。写真が発明された頃には、撮影されると魂が取られると恐れた人もいました。
《ゲルニカ》は反戦のシンボルであり、多くの人々に見てもらうべきだと思います。写真撮影がその手段になるならば、それは悪いことではありません。写真がSNSで拡散することで作品に興味を持ち、もっと深く知りたいと思う人もいるでしょう。
パレスチナのガザ地区からイスラエルへの空爆が突然始まった現在、ロシアのウクライナ侵攻が1年以上も泥沼状態で続く時代に、ゲルニカ村への空爆の悲劇を描いた《ゲルニカ》は私たちに問いかけています。
戦争や暴力は何をもたらすのか。平和や人権はどう守るべきか。私たちはそれにどう答えるべきか。
《ゲルニカ》の撮影禁止が解除されたことで、私たちはその問いかけにもっと近づくことができるようになったのではないでしょうか。