3億6000万円!
葛飾北斎の《神奈川沖浪裏》が世界で最も高価な浮世絵に!

葛飾北斎《神奈川沖浪裏》

葛飾北斎の《神奈川沖浪裏》は、「富嶽三十六景」の一図として1830年~1832年に制作された浮世絵で、大波(ビッグウェーブ)と富士山を描いた作品として世界的に有名です。この絵にインスピレーションを受けたドビュッシーが管弦楽曲《『海』管弦楽のための3つの交響的素描》を作曲したとか、出版したオーケストラスコアの初版の表紙にはこの絵が使われていたとか、当時のジャポニスム文化を背景にした逸話にも事欠きません。2024年から使われる日本の新千円札の裏側にも、この絵があしらわれています。


この作品は、ニューヨークのクリスティーズで2023年3月に行われたオークションで、予想落札額の50万ドルから70万ドルを大きく上回り、280万ドル(約3億6000万円)で落札されました。この価格は、浮世絵としても葛飾北斎作品としても史上最高です。


これまでの記録は、2021年にやはり《神奈川沖浪裏》の別の版が記録した159万ドルでした。


落札者は匿名の電話入札者で、6人の入札者による13分間の争奪戦の末に競り落としました。


落札された版画の値段が高くなった理由は、初期の刷りのもので版木が摩耗していないため線がシャープであり、ピンクの空に繊細な雲の輪郭が描かれていることが評価されたからです。この作品が何枚刷られたかはわかっていませんが、破格の結果となりました。


2023年8月にはドイツのバイエルン州立図書館が《神奈川沖浪裏》を個人コレクターから数百万ユーロ(数億円)で購入しました。オークションの価格に影響されて相場全体が上がっているのです。


さらに9月には《神奈川沖浪裏》2点がクリスティーズでオークションにかけられました。3月には280万ドル(約3億6000万円)で落札されたのですが、今回出品されたものはあまり保存状態がよくなく、1点は170万ドル(約2億5000万円)で落札、もう1点は折り目があったため25万2000ドル(3700万円)でに終わりました。《神奈川沖浪裏》は江戸時代に8000枚ほど刷られたものの、現存するものは200点ほどしかないと見られていて、紙や刷りの状態によって価格が大きく変わります。ちなみに大英博物館にはそのうちの3枚が所蔵されています。イギリスでの葛飾北斎の評価は非常に高いのです。


2023年のアートオークション市場において、葛飾北斎作品の年間売上高は1158万ドルとなり、北斎は全世界で163番目に売れたアーティストになりました。これは162位のロッカクアヤコに次ぐ位置で、167位の藤田嗣治よりも上位になります。


クリスティーズは、2024年3月に葛飾北斎の「富嶽三十六景」シリーズ全46作品セットがオークションに出品されると発表しています。アメリカ人コレクターが所有していたもので、国際的なオークションに一括で出品されるのは22年ぶりです。クリスティーズは今回の落札価格を、手数料を除いて300万~500万ドル(4億5000万~7億5000万円)と予想しています。いくらになるのか今から楽しみです。


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