有元利夫はなぜ今も人気があるのか?
宮脇檀の名建築・松川ボックスでの展示会に行ってみた
有元利夫は、イタリアのフレスコ画に影響を受けた独自の油彩技法と幻想的な作風で知られる画家です。安井賞や美術文化振興協会賞などの名だたる賞を受賞して将来を嘱望されていましたが、1985年に肝臓癌で38歳の若さで亡くなりました。
有元利夫の作品は、音楽や女神など西洋のモチーフを用いて、風化や剝落を意識した絵肌と静寂感のある画情を表現しています。夭逝したために作品数が少なく希少性が高いことから、高値で取引される傾向があります。
東京都新宿区西早稲田のユニークなギャラリー〈THE MIRROR〉では2024年4月9日(火)〜5月18日(土)の期間で、展示会「春の音色を聴く 〜有元利夫 in 松川ボックス〜」を開催しています。
〈THE MIRROR〉は、建築家の宮脇檀(みやわきまゆみ)が設計した住宅・松川ボックスにあります。松川ボックスは、コンクリートの箱の内部に木造の箱を組み合わせた個人住宅で、建築学会賞を受賞しています。
個人住宅なので、通常のギャラリーに比べると狭いのですが、それが親密感を醸し出していて、有元利夫の世界によく合っていました。大人数では入れないので、観覧は事前予約制になります。
今回の展示会では、コレクターの手元に40年近く収蔵されていたリトグラフ『四季』やエッチング『8人のアルルカン』などが住宅の各所に配置されています。廊下の壁にかけられた絵などはうっかりすると見落としそうなさりげなさでした。
音楽を愛した有元利夫にちなんで、5月12日にはバロック音楽の演奏会も開催されます。ぜひ足をお運びください。