絵を通して次世代へ受け継がれる思い
~ローランサンを孫へ送る婦人の話

優雅でやさしい色彩と、やわらかなタッチで夢あふれる女性像を描いた女性画家、マリー・ローランサン。あのココ・シャネルからも肖像画を依頼されるなど、当時はローランサンに肖像画を描いてもらうのが社会的なステータスとして流行するほどでした。

あどけない少女から、エレガントな女性まで、その時々の女性たちの表情を捉えた作品は、多くの人を魅了しています。日本での人気・知名度共に非常に高く、1983年には世界でも唯一のローランサン専門の美術館が長野県に開館するなど、人気を博しました。

魅力的な女性像を描いたローランサンの作品は、パリのオランジュリー美術館
や、ポンピドゥーセンターをはじめ、世界の美術館に収蔵され、今なお、世界中で愛され続けています。

ある日、ご年配のご婦人が画廊にいらっしゃり、「マリー・ローランサンの絵はありますか?」と尋ねてこられたことがありました。お話を伺うと、生まれたばかりの女の子のお孫さんにローランサンの絵を贈りたいのだと言うのです。


不思議に思い、どういうことかとお聞きすると、「女の子の孫には本来はひな人形を買ってやるでしょう。ただ、彼女の住まいはマンションで、スペースも限られるし、出し入れも大変。だから代わりにローランサンの絵を持たせてやろうと思って。」とおっしゃいました。


また、「いつか私がいなくなっても、私が好きだったローランサンの絵を見る度に、孫は私のことを思い出してくれるんじゃないかと思ってね。それに、ローランサンの絵を見て絵の好きな子になってくれたら嬉しいでしょう。」とお話くださり、ローランサンの描いた美しい女性の絵を購入されました。
大人になったお孫さんは、きっとおばあさまの若いころをその絵に重ねてみることでしょう。

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